金環日食を見た!

2012.5.21
エトワール生石
兵庫県洲本市由良町由良

 日本列島で金環日食が見られるのは、非常に珍しい。その日が2012年5月21日(月)にやって来ると言うことは、天体ファンのみならず、たくさんの人が知っており、その天体ショーを待ち望んでいた。兵庫県では、明石あたりが境界線で、それより北は部分日食、それより南は金環日食になるという。
 偶然にもその日は代休で職場はお休み。なのに私は淡路市に出張の仕事。ということは、少し(だいぶん)早起きして淡路島に渡れば、金環日食を見ることができるではないか!と思ったのが事の発端。ここから長い物語が始まることになる。
 金環日食が見られるか見られないかの一番の問題はお天気である。朝5時前に目覚ましをかけて、空を見ると、微妙ながら晴れているではないか。曇りならもう一度眠りにつく予定だったが、晴れているとなるとそうはいかない。早速身支度を整えて、朝5時半ごろに家を出た。山陽道の三木小野インターに向かう道中、雲は出ているものの、太陽の方角には雲は無い。行けども行けども、雲は無い。

 様相が変わって来たのは、明石海峡を半ばまで差し掛かったころである。明石海峡の上に雲が出てきている。場合によっては淡路SAで観測しようと思っていたのに、島に渡った途端に太陽が雲にかくれてしまった。今さら本州に戻れない。戻れなくはないが、出張は淡路市なので、一旦本州に戻って、また淡路に渡るとなると、安くはない明石海洋大橋の通行料が2倍かかってしまう。
 淡路SAの駐車場まで入ったものの、そそくさとスルーして、とりあえずは出張先の津名に向かう。島の西側は、雲の隙間から晴れ間ものぞくものの、津名一宮でインターを降りると、また厚い雲に覆われてしまった。
 これは、行けるところまで行くしかない。時刻はまだ6時半すぎ。羊雲のような雲は北に流れているようなので、国道28号線を南へ下ることにした。洲本を過ぎても、まだ太陽は雲に隠れている。すでに部分日食が始まっている。時折薄日がさした時に日食めがねで太陽を見ると、右側が欠けてきていた。さらに南下をつづける。
 洲本温泉も過ぎ、最大食となる金管日食の7時30分まで、とにかく行けるところまで行くことにする。偶然見つけた、「エトワール生石」に車を停めた。淡路島の南部、和歌山と向かい合って、いちばん東に突き出たところである。地図には「生石鼻」とある。これ以上行くと、金環日食が終わってしまう。ダメ元で防波堤まで行って、観測することに。既に観測されている方が20名ほどおられた。
 雲は晴れてはいないものの、だいぶん薄曇になり、その薄雲がフィルターの役目をして、なんと肉眼で金環がきれいに見えるではないか。考えてみれば、雲が無ければ日食メガネで見ることになり、フィルターを通したオレンジ色の金環しか見ることができない。しかし、肉眼で金環が見れるのである。そしてなんと、コンパクトデジカメできれいに撮れる。フィルターも何もなしで撮れる。そんなことがわかっていたら、一眼レフを持ってきたのに。ちなみに日食メガネをレンズにかぶせて太陽を撮ってみたが、光量不足でシャッター速度が遅くなり、ブレた画像しか撮れなかった。
 これ以上雲が暑ければ、金環日食は見れない。これ以上雲が薄ければ、日食メガネを通してでないと金環日食は見れないし、写真が撮れない。この雲があるからこそ、肉眼で金環日食を見ることができ、カメラにも収めることができた。雲があったからこそ、金環がきれいに見えるこんな南まで来ることもできた。いろんな偶然が重なり、金環日食を見ることができたのは、奇跡としか言いようがない。
 ちなみに、以下の写真については、ほとんど画像処理をしていない。実際、肉眼でも、ほとんど同じように見えた。せっかく買った日食メガネを通すと、暗くて見えない。日食メガネは、次に訪れる金星の太陽面通過までとっておくことにしよう。

 後日わかったことだが、淡路島の生石鼻は最東端になり、今回兵庫県から見える日食としては、いちばん金環に近い(影の部分が中央に近い)日食であることがわかった。何度も車を止めながら南下したので、最初から目指していたわけではないが、雲のお陰で兵庫県で一番金環に近い日食を見られたことは、偶然とはいえすごい!

こんな暑い雲が・・・ 辿りついた生石鼻 
まもなく金環日食に 金環日食
まもなく金環日食も終わり カチューシャ日食
金環日食が終わり、周りが明るく 日食メガネを通すとこうなる。

(写真はほとんど画像処理をしていません。)